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空降るでいず

じゆうな いろで えがいて みよう

シン・ゴジラを3営業日連続で見た話

 3営業日って言うのは弊社の話ね。金・月・火と連続で会社の帰りに「シン・ゴジラ」を見てきた。全部レイトショー。

 さすがに3回も見るつもりは無かったし、元々見に行くつもりも無かったんだよ。予告もいまいちだし、庵野総監督は個人的2大トラウマアニメ映画の片方*1の監督なのでノミの心臓の自分にはかなりハードではないかといつもびびってしまうし。

 一方で最近「ふしぎの海のナディア*2を見たし、その勢いでエヴァQも見直していたので、こんな丁度良いタイミングで公開されるならということで早速初日に見てきたと。

 見たらけっこう面白かったけど2回も見に行くのもちょっと…というところで丁度1日ファーストデーだったので、映画が1,100円で見られるのならまぁ見ておくかと行ったのが月曜日。

 そして火曜日。名古屋は夕方に集中豪雨が発生していた。雨雲レーダーを見ると1時間以上ひたすら真っ赤の状態で、水はけの悪い名古屋では面倒なことになる予感がする。

mainichi.jp

 結局JR、名鉄ともに運転見合わせ。どこかが浸水だか冠水だかしているとかで、運転再開までが長いとのことだった。一応名古屋駅の様子を見に行ったものの、駅に近づくとだんだん地下街で座り込んでいる人が増えてきて、改札周辺には人だかり。どう見ても動いていない。というわけで撤収し、運転再開までの時間調整の為に映画館に吸い込まれていったのでした。

 映画を見終わって駅に戻ってきたのが22時30分、ちょうど電車が動き出したところだったようだけど改札前は相変わらず以下のような状況だった。

「米軍の攻撃が〜」というのはシン・ゴジラでそういうシーンがあるんだけど、映画を見た後に単なる運転見合わせでこれだけ人がごった返すとなると実際にゴジラが来たりしたらどうなるのか気になってしまう。そんなこともあってJRと名鉄を行ったり来たりして状況を見つつ、帰った頃には日付が変わっていた。名古屋は雨に弱すぎ。

いちおう感想というか、思ったこと

 ここから「シン・ゴジラ」の話。

 縦長の読書感想文用紙を渡されても2〜3行しか書けない感受性崩壊人間なので書けやしないんだけど、一応無理に書いておくとこんな感じ。(ぐだぐだと長く書いちゃったぞ・ネタバレはそこそこレベル)



 庵野総監督好き放題やったなあ!

 いやあ、面白かった。こんなに見ていて面白いというか、楽しい映画を作ってくるとは全く思っていなかった。「先にエヴァやれよ」とずっと思ってたけど、見た瞬間にそんな考えは吹っ飛んでしまった。ゴジラやって良かったね。

テロップ芸

 最初にいつもの東宝マークが出た後に、昔の東宝マークやらタイトルやらが出た(もうこの時点で昔の作品を意識していて楽しい)あと、最初の海のカットで「東京湾 横浜沖」と若干縦長の明朝体のテロップが出た瞬間からテンションが上がる。いつものテロップだ!*3

 このテロップがもはや「テロップ芸」といえる勢いでどんどん出てくる。「東京湾アクアライン」のような地名・施設名に始まり登場人物とその役職、会議名、会議室名、自衛隊の部隊、ヘリ、兵器、しまいには「スーパーコンピュータ」とかまでテロップを付けてくるので見ていて楽しい。

 ただこのテロップも無意味に乱発しているわけでもなくて、多すぎる登場人物や目まぐるしい場面移動に対する理解の一助にはなっている(ただしそれも多すぎて観客が追いつけない)し、後半で突然主要人物になっている人が前半で全く見覚えがなかった理由も序盤でさらっとテロップひとつで説明されている。対して巨大不明生物やそれに関連するもの(虚構サイド)については一切テロップが出ない。そりゃそうか。

見本市

 前半は特に楽しい。言うなれば「政治と自衛隊の見本市」という感じで、怒濤のテロップと共に政治家達のやりとり(「総理レク(チャー)」とか官僚が後ろからスッとメモを差し出してくるとか)がどんどん行われていく。予告でも会議の映像が沢山出てつまらなそうだったのに、早口とテロップの力を得るとこんなことになるのかと驚くしかない。

 最初は巨大不明生物に対して「そんなものはいない」「上陸はしてこない」とゆるい態度を取っていたのが、事態が深刻になるにつれどんどんはっきりとした対応を取っていくようになるし、「自衛隊の弾を国民に向けるわけにはいかない!」という大杉漣演じる大河内総理のセリフも非常にいい。過去のゴジラだったらバンバン撃っちゃってそうだし、考えてみれば当然の反応・対応ではあるんだけどそういうところも新鮮だった。

 でもそれは中盤のあのシーンまで。

今回のゴジラさんについて

 一言で言えば、「こいつ使徒だ」。以上です。

 映画の撮影開始前のミーティングで庵野総監督が「今回東宝はお金を沢山出してくれます」という発言と共に「過去のゴジラをなかったことにしてくれます」という発言をしていたというのを後で知ったんだけど、過去のゴジラを無かったことにさせてもらえた効果は計り知れない。

  • 最初に上陸して姿が映った時点で「あっ こいつ使徒だ」
  • 放射熱線を吐き始めて数秒後に「あっ こいつ使徒だ」

 幼稚園の頃にVSシリーズに触れていた世代としては、ゴジラと言えば敵怪獣が大暴れしたところにどーんと現れて話題の建物を壊しつつ放射熱線で敵を倒して颯爽と海に帰っていくいくイメージが強い。ところが今回のゴジラは姿を見せた瞬間から観客に恐怖を植え付け、特に誰かと戦っているわけでも暴れているわけでもないのに淡々と街を壊して進み、中盤の放射熱線で全てを破壊する。これが怖い。

 ゴジラが全体を見せた瞬間から今回の映画はゴジラがというよりは「エヴァのいない東京に(多少弱めの)使徒が出現したら」という映画ではないかという目でみていたんだけど、最後まで見てみると確かにそれっぽい感じがする。姿は変わるしやたら硬いし、放射熱線も驚きの切れ味。後半で巨災対がゴジラの情報を集めて色々とコメントをするけど、その内容もエヴァで聞いたものにきわめて近く使徒っぽい。

 でもそれでいてちゃんと観客が「ゴジラだ」と思える枠に収めているんだからすごい。あれだけ好き放題にゴジラを仕立て上げていてちゃんとゴジラだと思えるんだから驚きのバランス感覚だよ。

現実対虚構

 今作のコピーは「現実対虚構 <ニッポン対ゴジラ>」だった。

 確かに前半は現実、を徹底的に取材して再構成した自衛隊の作戦や政治のやりとりや物事の進め方を中心に据えていて、そこにゴジラという虚構が割って入る姿を描いている。さっき「見本市」と呼んだのは現実はざっくりこんな風になっているんだよ、という僕ら一般人の知らない裏側がなんとなくではあるけど知ることができるからだ。だから作中でも事態の悪化に伴って現実サイドも現実の枠組みの中で臨戦態勢になってくる。

 ところが中盤のシーンを境に現実が急に虚構サイドに引き寄せられる。

 ネットで感想を読むと「後半がだるい」といった評価が散見されるし、確かにこんな緊急時にそんなやりとりするかという変なシーンもあったりはする。とにかく違和感が強くなる。

 こう書くと変だけど、ゴジラの放射熱線で世界が虚構に包まれちゃったんじゃないかなぁ、という気はする。現実の中枢を焼かれてしまって映画内の現実と虚構のバランスが崩れてしまった。だから登場人物のやりとりも虚構くさくなるし、取り扱うものも虚構が中心に入っていくわけだし。

 終盤のアレなんかも現実のものを使ってはいるけど中心に据えられているのはゴジラから派生した虚構であるし、全体的に虚構くささが他のどのシーンよりも強い。僕はあのシーンが大好きで何度でも見に行きたいくらいだけど、まあゴジラでもウルトラマンでもエヴァでも現実には存在しないヒーローが現実には存在しない悪を倒しているわけで、いくら現実対虚構といっても結局虚構を制することは虚構にしかできないよって事なんじゃないかなあ。

 あのシーンだけはCGも多少雑に感じられる部分もあって、わざと「特撮感」があるように仕立てているように感じる。松本人志監督の「大日本人」が最後で突然着ぐるみコントになる(例がすごく悪い)のと一緒で、「いろいろやってきたけど特撮はやっぱりこういうのでしょ」という盛大なお楽しみタイムを設けてくれたというか、CG中心ながらミニチュアあり資料映像ありでかなりぐっちゃぐちゃの特撮タイムになっていてすごく楽しい。

 現実対虚構って言うけど、最後にまざまざと見せつけられるのは虚構の世界を作るおっさん達の空想力なんじゃないですかねー。

ゴジラエヴァ

 今回のゴジラを見ていて思い出したのが「新世紀エヴァンゲリオン」のTVシリーズ(の前半)だった。当時は小学2年生でうちのオカン曰く「よく分からない」と言いながら毎週見ていたそうだ。とはいえよく分からない上に血のようなものもブシャァーっと噴き出すアニメなのにちゃんと毎週しっかり見ていたし、なにより毎週全く見たことの無い映像が続くし新鮮だった。

 エヴァの前半はまだ内面的なよく分からない話があまり出てこなかったし、使徒という未知の生物に自衛隊が攻撃を仕掛けても全く歯が立たないし、政治家もイマイチきちんと動かないなど今回のシン・ゴジラの序盤から中盤に似ている要素が多い。「よく理解できないけど面白い」し、ちょっとした物ややりとりが格好良く見える。

 テロップやカメラワーク、ちょっとしたゴジラの設定など細かいところを挙げればいかにも庵野作品ではあるけど、今回の場合は「調子のいいときに作っている」か「楽しんで作っている」のが伝わってくる出来で、本当にエヴァ前半のような勢いと熱量を感じる映画になっていた。終盤の作戦の地味さと荒唐無稽感はなかなかだけど一方で数十年間で温めてきたネタを小出しで放出してるんじゃないかという気もして面白い。余計な物は排して、作りたい物を作っているのが伝わる。そんな楽しい映画です。

 続編を作ろうと思えば作れるんだろうしそういう終わり方にはなっているけど、仮に作ったところで今作のような面白さはないだろうしもはやゴジラではないものが出来上がってしまうような気がする。後にも先にもないようなゴジラ映画なので見てない方は是非見て欲しい。

 こんなまとまっていない文章を読んでくれてありがとう。ご苦労でした。

*1:新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」。小学生の時にレンタルビデオで見てやられてしまった。ちなみにもう片方は2,3歳の時に見た「AKIRA」。次点はナウシカ。(過去のエントリを見るとナウシカ込みで3大トラウマ扱いになってたけど気にしない)

*2:庵野秀明総監督だけでなく樋口真嗣監督まで同じ。シン・ゴジラと同じ組み合わせ

*3:あとで知ったんだけど今回のフォントはエヴァでお馴染みのマティスEBではなく本明朝EIIとのこと