空降るでいず

じゆうな いろで えがいて みよう

劇場版艦これを見た。これは惜しい

 「劇場版艦これ」が公開されたので、早速初日に見てきた。

 もし「面白かったかつまらなかったか2択で答えろ」と言われたら、何故そんなことを決めなきゃならんのかと文句を言いつつ渋々「つまらなかった」と答えると思う。全然面白くなかったよ。

 でも、おそらくこの映画を評価する人はそれなりに多く出るだろうし、自分もできるだけ褒める側に回りたい。面白いかどうかは別として。うーん、説明しづらい。

元々期待はしていない。が

 元々艦これの映画には期待してなかった。去年の1月から放送されていたテレビシリーズがシリアス回を引きずった翌週をギャグ回にしてしまったり、なにかとぐちゃぐちゃで出来が悪かった印象しかなかったし、評判もなんだか悪かった。自分もこんなエントリを書いてたくらいだし。

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 なので映画化してもどうせちぐはぐにしかならないだろうと思っていたし、駄目だと分かっていて見に行くつもりだった。とはいえ、脚本を艦これ生みの親の田中Pが手がけている*1とのことだったので、ちょっとだけ(どうせ無理だと分かりつつも)期待している部分はあったと思う。

しかしこれがあんなことになろうとは——

劇場版艦これはすごいぞ!よくやった!

 田中P(と花田十輝)がやってくれました。あのダメダメなアニメ艦これが大化けです。

全然予想もしていなかった展開になっていて、台本を読んで、とても驚きました。

 というのが、パンフレットに載っているインタビューでの上坂すみれ(主人公吹雪役)の最初の一言だった。まさにこれ。

 元々ゲームも、それに伴ってアニメも悪く言えば設定がスカスカで「あとは皆さんのご想像にお任せします」、というのが今までの艦これの基本方針だった。しかしそこに「物語の可能性の一つ」と前置きしつつも生みの親が直々に隙間を埋めにかかったのが今回の劇場版艦これだった。

艦娘は何のために戦うのか。深海棲艦とは。そういえばテレビシリーズで吹雪はどこからきたのか。

 その設定の隙間を縫うように話が展開されるし、この話の軸になるあの艦娘の表現がまた良い。この艦娘の名前が出せないと全部ネタバレ扱いになって何一つ書けないんだけど、公式サイトのストーリーにも名前が全く出てこないから書けないんだよなあ。もう何も書けない。あの服をフード付きにしてしかも被らせたのは見事だ ←早速書いてる

 とにかくあの艦娘がせっかく出てきたのにどんどん酷いことになっていくし、そこから自分たちは何なのか、どうなれば戦いが終わるのか、といった内容がシリアスな雰囲気の中で提示されていく。アニメ艦これ世界での戦いが今作で終わるわけではないけど、放送当時のあの訳が分からない感じがだいぶ整理されるというか。

 今まで艦これはアニメどころかそもそもゲームの時点でストーリーがあやふやだったけど、「艦これって実はこういう話なんだよ」と言われて飲み込めるものがようやく出てきたんじゃないかと思う。

 どこからどう見ても「それテレビシリーズの頃には微塵も考えてなかったでしょ」っていう後付け設定だらけには見える。ただ元々が隙だらけなので変な風には思えないし、むしろ最初からこの設定ありきでテレビシリーズを作っていたら全然違ったのになあ、と思った。すごく締まった1クールになってたはずだ。ただせっかくの人気タイトルなのに渋すぎてプロデューサーあたりに敬遠されそうではあるので、残念ながらどっちにしろそんなものは最初から生まれなかったんだろうけど。

すごい、でも面白くないのが今作

 というわけですごい内容だった劇場版艦これ、ここまで書いておいて言うのも何だけど観ていて全然盛り上がらない。

 あのイマイチだった海上戦が随分よくなっているし、空気を読んでか艦これ恒例の「攻撃が当たると服が破れる」も割と控えめになっていてこれも良かった。

 ところが作品全体を覆う暗い雰囲気というか、なにか背中を引っ張られるようなもやもやした何かがずっと残っている感じがあるし、一番の山場も観客を置いて勝手に繰り広げられている感があって作品に乗り切れない。頭では「これはきっとクライマックスだ」と分かっていても「あと一山あるはずだ」と信じたくなるような盛り上がりのなさが気になるまま終わってしまう。

 今回は珍しく素材が良かったのにうまく料理できなかった、という感じかな。

 単純に監督や制作サイドが脚本を扱いきれなかったんじゃないかと思う。時間の都合上カットされたシーンもあるそうだし、もうちょっと時間があれば整ったものになっていたかもしれない。外野なので適当なことを言うと、おそらくテレビシリーズを無かったことにして上映時間もあと20分くらい延ばして映画が得意な制作会社が作品を作っていたらけっこうな話題作になっていたんじゃないかと思う。

 一言で言うと「惜しい」。もう少し頑張ればもっとすごくなったのに、勿体ない。

観に行った方が良い?

 観に行った方が良い?と聞かれるとちょっと答えにくい。

 映画が終わった後に「人には薦められないな・・」という悲しそうな声を聞いたんだけど、確かに面白いから観に行けと言うのは難しい。かと言ってつまらないから見に行かなくて良いよという程でもない。この映画は決して駄作ではない。

 まあ、艦これのゲームをやってる提督さんは観ておいて損はないんじゃないかなあ、ちょっとだけ提督業のモチベーションが上がる気がする。アニメだけの人はお好きなように、ってところかな。

その他気になったところ

箇条書きで。

  • 遂に喋る陽炎型が登場。コニシ艦じゃなくて天津風/時津風だけど。時津風は好きじゃないけど動くと可愛い。ありがたい。
  • 春雨や綾波もちらっと登場。ありがたい。
  • 一方で島風を見かけなかったのが気になった。パンフレットには載ってるんだけど、いた?
  • この世界の片隅に」でひっくり返ってた某艦も登場。
  • ていうか、あんな南方に艦娘集めて本土は大丈夫なん?
  • みんなほとんど改二になってることについての説明がない
  • ダイソン相手に駆逐艦はあかんやろ
  • フードをかぶるのって提督からしたらあの艦を思い出させてうまい表現よね

じゃあ今日はこの辺で。

*1:花田十輝と共同