ずっと前から言われていた名鉄名古屋駅と駅ビルの大改造計画、遂に名鉄から概要が発表された。
南北400メートルに及ぶ巨大な壁が中村区名駅に誕生するということで、近年急に高層ビルだらけになっている名駅エリアでも異色の存在になると思われる。というか、かなりの車線がある道路もまたいでしまう巨大なビルということでかなり滅茶苦茶な計画な気もするけど・・。
で、ビルよりも気になるのがこちら。
なんとあの悪名高い名古屋駅を拡張、利便性を向上するという。
しかしどこに拡張する余地があるというのか。名鉄名古屋駅は南北の方向を向いた駅で、東隣に地下鉄東山線、西隣には近鉄名古屋線、下には地下鉄桜通線、上には今回問題のビル群が隣接している。更にこの駅の南北は高架で、名古屋駅のためだけに地下に潜っている状態。よくもまあ最低限の手数でここまで追い詰められた構造になったもんだなといつも感心している。昭和30年代開通なのにあまりに小さすぎる東山線と並んで名古屋の鉄道のダメさが出ている部分だと思う。
で、名鉄のリリースPDF(どうみてもパワポ)を見ると、なんと南に拡張するという。南????進行方向に広げてどうすんの????
まずは現状をおさらい
全国屈指のカオス駅として有名な名鉄名古屋駅。今はこんなレイアウト。
図にするとあまりに単純でどこがカオスなのか全く解らないけど、この単純なホーム構成が混乱を招いている。
名鉄の路線は神経のように末端が広がる路線網になっており、末端の路線を見ると15分に1本とか30分に1本とかしか電車が無い。しかしその大半が名古屋駅を通ることになるので、結果名古屋駅では昼間でも3分に1本が過言では無いくらいのペースで電車が来る。
しかも同じホームに来る電車も方面がばらばらなので乗り間違える可能性大。その対策として特定の方面は前寄りに、ある方面の列車は後ろ寄りに停まる、といった運用をしているので、最悪の場合初めて来た人が乗りたい電車が停まらない場所で到着を待ってしまうと、何時まで経っても電車が来ない(ように思える)状態に陥ってしまう。
さらには線路とホームが左右にうねったS字のレイアウトになっている。一体何をどうすればこんな構造になるのか。
広くもないのに方向感覚を失う左右非対称超立体的極悪非道のコンコースについても語りたいけど今回は割愛。
そんな名鉄名古屋駅、拡張後の姿はどうなるのか。超適当に予想してみた。
案1:切り欠きホーム
以前から「国土交通省から空港アクセスのためホーム拡張の希望が」みたいな話が出ているので、少なくとも空港行きホームができると思われる。
関西人なので、線路方向に長いホームと聞くと真っ先に思いつくのが京阪淀屋橋や中之島の切り欠きホーム。最近だと京急蒲田もホームの形だけを見れば(2層であることを見逃せば)これに近い。
今の降車兼特急乗車ホームを諦めて線路を左右両端に移設、中央のホームを東西方向と南に大幅拡張して、駅南寄りの東側に名古屋始発の線路を追加。現状金山駅止まりにしている列車のうち数本と、名古屋駅止まりで栄生で折り返しているミュースカイに割り当てる。
降車専用ホームがなくなるわ上り下りが同一ホームになるわでぐちゃぐちゃになりそうだけど、現状の乗降分離も多少怪しい(他の方面への列車に名古屋駅で乗り換えようとすると無駄にコンコースを回るか違反するかのどちらかになる)ので、もういいでしょう。
金山方面のホームだけつぶすパターンも考えたけど幅が足りるのか分からないし岐阜・犬山方面が大変なことになるので多分これはない。
案2:凹型ホーム
やってることは案1と一緒。
違うのは端に切り欠きを設けるか、ホームの中央に持ってくるかの部分だけ。結局のところ中部空港向けのホームを確保するだけの発展となる。
案1に対するこれのメリットは名古屋折り返し列車の乗降分離が可能(停車時は先に岐阜犬山方面側のドアを開いて乗り換えしやすく、追って金山側のドアを開くことで乗客の混乱を減らす)であることくらいで、そんな優れたものでもない。
ちなみに乗降分離ありの状態からこのレイアウトに変貌した前例として、阪神の神戸三宮駅が存在する。
阪神の神戸三宮(当時は「三宮」駅)は元々3線構造だったものの、南の1本が折り返し専用、中央と北が元町駅方面と繋がる線路となっていた。それを両端の降車専用ホームを撤去、線路を両端に移設した上で折り返しだった南側を貫通、逆に中央の線路をふさぐということをしている。現在中央のホームはなんば線直通列車専用となっているので分かりやすい。
たしかに今の名鉄名古屋くらいの幅があればこれくらいは実現できそうな気がする。
案3:直列配置の2面4線
名鉄のニュースリリースの駅拡張範囲イメージを眺めていて閃いたのがコレ。もはや奇案としか言いようがない。いろんな意味でヤバい。
名鉄名古屋は駅全体がS字になっている。よく胃薬のCMに出てくる胃をイメージすると分かりやすい(かもしれない)けど、地図の右上(北)から左へうねって左下(南)へと落ちていくような構造で、ホームごとうねっているんだよね。
この構造を生かし、南方向にだけ拡張するのであれば以下のようなレイアウトも可能なのでは。
縦にホームを2面用意するなんて駅は正直全く記憶に無いけど、できなくはないはず。ひとつの島式ホームを方面別に分割してしまう事でホームの幅を確保するというやり方はすぐ隣の東山線名古屋駅でもやっているわけで。
また、最長8両編成、車両が19mとすると、ホームに必要な長さは152m、多少余らせても160m。これを2つつなげても320mで、東海道新幹線のホーム(ざっくり400m)よりも短く済む。その差の80mをホーム間の空間に割り当てて分岐に使えばいける。
日刊工業新聞の記事では以下のような記述もある。
名古屋市内で会見した安藤隆司社長は「細かい方面別にして不便さを解消できる」と抱負を述べた。
この表現だと空港専用のホームを作るどころではない細分化に取り組もうとしているので、それを実現するためにはかなりの空間が必要。2面4線みたいな大がかりなことをやるのであればこういった奇策に走るしかない。
メリット・デメリット
この方式ならコンコースの時点で方面別の案内や旅客の誘導を完全に分離できるし、ホームでも行き先別に発着番線を分けることが可能になる。さらに方面別に停車位置を変えるという妙なことをしなくても良くなり、特急の長時間停車や名古屋駅を使った接続・追い越し・時間調整も可能。夢のプランだ。
弱点は乗降分離がなくなるので混雑時に乗車客と降車客が接触しやすくなること、今のようにホーム階にコンビニや飲食店が置けなくなること*1、そして客は相当歩かされるということ。
ビルの建て替えを今のヤマダ電機近辺から行うのであれば先に南寄りホームの建設から手を付けられるので、さまざまな拡張が期待できる。うまくやれば今の浅すぎるホーム深度を少し下に下げられる可能性もあるし。あと現状のダメダメコンコースを完全破壊して「ターミナルスクエア*2」を作るそうなので、そういった空間を確保するためには暫定的な代替設備も必要。南側にもうひとつホームがあると有利ではないだろうか。
なんでこんな案を推すのか
PDFの図を見たら拡張範囲が不自然なわけで。未確定とはいえ大枠はああなるわけだし、自由に使えるのがビルの地下なんだから仕方ないんだけど、駅構造として考えたらあの範囲は異常だよ。あんな拡張イメージ見たこと無い。
という妄想でした。さて、正解はどうなるのやら。